1997年にベネッセコーポレーションより刊行されたものに加筆して復刻された、大人に読んでもらいたい絵本。 今は、のどかな森のほとり、ひとりの兵士が死んでいる。1時間前、兵士は生きていて闘っていた。2時間前、兵士はひとり道に迷っていた。…10日前、恋人にプロポーズをし将来を誓い合った。バスケットボールが好きで高校時代は毎日していた。8歳の時、近所の犬の顔に落書きをしておこられた。 この絵本は戦争の絵本でありながら、戦争を描いたものではない。今は死んでいるひとりの兵士の人生を誕生までさかのぼっていくのであるが、その人生はあまりにも普通で、だからこそ胸に響く。ニュースでの戦死者は数で語られることが多く、その映像も現実味のないもの。しかし、そこで死んだ兵士のみならず一般の民衆にも、それぞれ普通で当たり前の幸せがあったのだということに気付かされる。シンプルな絵に簡潔な文章。淡々と描かれるそのページの余白に、何かを考えずにはいられない。(小山由絵)
戦争と日常
平和な日本に暮らしていると、なかなか理解できない、日常の先に戦争がある現実。何年、何十年経ってもどこかの国で起こっている戦争は「ひとごと」ではないとこの本は気づかせてくれます。子供達だけでなく、大人にも読んでほしい絵本です。
戦争で死んだ兵士のこと
絵本ですが、心うたれます。一人の人生を退いて客観的に捉えています。
こころに“命”の重みを響かせてくれます
私はこの本をインターネットで購入したですが、受け取ったときは定価880円ですごく薄い本の厚さに、がっかりしました。
でも、本を開いてその短い文章と素朴な絵に心を揺らされました。
『戦争で死んだ兵士のこと』
その薄い本の最後のページにたどり着くころには私は涙してしまいました。
命というものに触れることのできる1冊です。
※日本語と一緒に英文タイトル、英文が載っています。
大人の心に
兵士が死んでいる、、というところから始まり、
その兵士の人生を逆に振り返っていく構成です。
一時間前は、道に迷っていた、二時間前は、、、というふうに、
人生をさかのぼりながら話が淡々と展開されていきます。
ただ淡々と。
特別な人生でもなく、輝かしい何かがあるわけでも
おもしろいストーリーがあるわけではありません。
ただ淡々と、人生が書かれています。
普通の人が、普通に死んでいます。
その描写が、それ自体が、我々に「何か」を
強烈なメッセージを持って問いかけてきます。
どこかの誰かの商売のための平和主義なんかより、
ものすごく心に響く本でした。
麻痺していく感覚
昨今、世界各国で悲惨な事件や事故が多発しています。日本国内もまた然り。
事件や事故も恐ろしいですが、我々人間の心が、こういった事件や事故に慣れ、その感覚が麻痺していくことはもっと恐ろしいことだと思います。我々のような戦争を知らない世代、そして日本という比較的治安の良い国に生まれ育った人間からすると、戦争も、テロも、紛争も、遠い世界のことに感じると思います。「兵士」というものにも、何か特別な響きを感じることと思います。
しかし、この本に登場する兵士は、普通の家庭に生まれ、我々日本人の多くがそうであるように、普通に成長し、いたずらして怒られ、スポーツに熱中し、恋をし、将来を共有できる伴侶を見つけます。戦火に巻き込まれた子供を救い、道にも迷う、ごくありふれた人間です。
愛する婚約者を残し、家族を残して死んだ無名戦士の胸中、無念はいかばかりか、残された婚約者、家族の悲しみを思うと涙が出ます。
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