この本の功罪について考え直してみました。
前回レビューを書いたときには、☆5つでした(第5巻は操作ミスで一つになってしまいましたが、5つです)。 その後、もし私のリストマニアをごらんいただいた方ならお分かりのとおり、順次合計100枚以上のCDのレビューを書かせていただきました。もちろん、志ん朝師匠のCDで持っているものは、まだ全部ではありませんが、相当数書いています。ところが、不思議なことに、CDへのレビューはほとんどないのですね。大体私が、「最初のレビュー」です。前回、CDをそろえましょうと提案しましたが、どうやら、この本は買ったけれど、CDは聞いていない人が相当数いるのではないかと思えます。 この本では、円生100席も担当した京須 偕充 さんが、師匠の微妙なしぐさなどを「邪魔にならない程度に」括弧書きしてくれていますが、仮に声に出して読んだとしても、この本に収録された師匠の話芸は再現は困難でしょう。 落語は、もともと、話芸なのです。文字で読むものではないのです。この本はこの本に収録された噺を全て聞いた経験のあるものには、電車の中で読んでも再現できるでしょうが、聴いたことのない人には、師匠の真実の姿が正しく伝わらないのではないかと言う危機感に襲われました。 もしこの推測が正しいとしたら、この本は編者の意図を離れて、師匠の至芸を味わう機会を奪ってしまった罪な本になるのかもしれません。この推測が外れることを、切に願うものであります。
絶品は「文七元結」
なんといっても絶品は「文七元結(ぶんしちもっとい」 今の世の中に、たとえば現金400万円(1両を8万と換算)を無くしてしまった人に、自分の借金返済400万円をぽんとその人にあげてしまう人、いますか? 借金返済できないと自分の愛娘を肩代わりに女郎屋に連れて行かせてしまうんですよ。 私にはできません。目の前で自殺しようとするのは止めますが、それ以上のことはできず店まで連れて行くのがせいぜいです。 。 最後はめでたしめでたしと分かっていても、読んでてはらはらします。 さすが志ん朝。絶品です。 人情の機敏をこまやかに語った全11編収録。 ぜひぜひ声を出して読んでみて下さい。
筑摩書房
志ん朝の落語〈3〉遊び色々 (ちくま文庫) 志ん朝の落語 5 浮きつ沈みつ (ちくま文庫) 志ん朝の落語〈1〉男と女 (ちくま文庫) 志ん朝の落語〈4〉粗忽奇天烈 (ちくま文庫) 志ん朝の落語 6 (ちくま文庫)
|